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毛筆で書かれた手紙を見ていると、その方のお人柄や心情が自然と伝わってきて、ほのぼのとした気持になります。
心をうたれるような手紙は、もちろん、まごころのこもった「文章」であることが多いですが、ことばを選んで丁寧に書かれた手紙には、その人、その人の味わいがあり、ことば以上のものが伝わってきて、感激させられます。本書は、とくに年賀状をとりあげ、ことばの選択と表現法、文字の配置と墨絵との調和の美をテーマにした手本集にしました。
新しい年を迎えるときは、すべての人が新鮮で清純な気持になっています。こんなとき、あの方、この方への新たな思いを毛筆に託する年賀状は、より深い人間関係を育むものとして、生活の中でも人切な慣習といえましょう。ともすると、年末の忙しさの中で、形式的に印刷された年賀状にしがちですが、早めに準備して、自筆のものを書くように心がけたいものです。年賀状の交換は、儀礼的なものであってはなりません。
「書」を少しでも勉強された方なら、字の大きさ、書体、余白のとり方で、紙面が大きく変わっていくことをご存知でしょう。年賀状も、自分の気持を上手に表現するには、日常からの心がけが大切です。本書が、このような意味で多くの方々の参考になればまことに幸せであります。
① まず、相手の方にわかる書体を選びましょう。どんなに自分が気に入っても、受けとった方 が理解できないものでは失礼になります。
② 目上の方に出す年賀状は、ことばの選択に注意しましょう。謙虚で尊敬の念を忘れないこと が大切です。
③ わずか二字だけでも、その人の気持や正月らしい雰囲気を表現することができます。気にい ったことばはメモしておきましょう。
④ 短くて、効果的な添え書きを工夫しましょう。形式的な賀詞のとき、この添え書きがぐっと 生きてきます。
⑤ このように、賀詞、添え書き、書体は、相手の方にあわせて、ちょっと変える工夫をする と、喜んでいただけるものになります。
⑥ 字数によって、字の大きさを変えましょう。たとえば「賀正」のように二字だけのときは、 大きく、どしっと書きます。字の大きさや余白の生かし方で、年賀状の表情が変わってきて 楽しいものです。
⑦ 書を学ぶ人たちの間では、変体がなや草書体などの書の高度な技法を使って交換、批評しあ っているようです。
⑧ 引首印や雅印は、作品を完成するのに大変重要な役割を果たすもので、使い方で、全体の感 じを優雅なものにします。印の大小、押す位置、二つ以上押すときの配置など本書の手本を よく見て研究してください。
⑨ 本書の印泥(朱肉)の色は、印刷の都合で一種類ですが、内容や紙の色によって工夫すると よいでしょう。
⑩ 年賀状は、紙面がせまいので、小さい印を使いますが、和歌や俳句を使うときは、それにふ さわしい印を工夫・選択してください。
⑪ 文字の大きさ、配置(余白の使い方)、印の大小、位置、印泥の色などは、ふだんから興味 をもって、著名な書道家の作品を見ていると、自然とわかるようになります。
(本体1,100円)